足場の法改正とは?義務化された内容や施主への影響についてわかりやすく解説

足場の法改正とは?

2024年4月1日から、足場に関する法律が改正されたのをご存知でしょうか?

今回の法改正では、「本足場の原則義務化」や「一側足場の使用制限」など安全面を重視したルールが新たに定められました。

この背景には、労働災害の防止や作業現場の安全性を高める目的があります。

中でも、「足場点検者の指名」や「点検記録の保存」といった項目が義務化されたことで、より厳格な安全管理が求められるようになりました。

今回の記事では、足場法改正に至った背景から具体的な法改正の内容、そして施主や注文者にどのような影響があるのかまで、分かりやすく解説しています。

足場の法改正に至った背景

はじめに、「なぜ、法改正が行われたのか」について簡単に説明します。

過去の事故や労災の状況

過去の事故や労災の状況

建設業は、産業別に見ると死亡災害の発生件数が特に多い業種です

上のグラフから分かるように、建設現場では多くのリスクがあり、特に「転落」は約4割を占め、死亡災害の最多原因です。

特に、一側足場の安全性が問題視されており、死亡事故や重傷事故の原因となるケースも少なくありませんでした。

こうした状況を受けて、労働安全衛生の観点から対策が求められていました。

安全意識の高まりと法改正の目的

安全意識の高まりと法改正の目的

近年、働く人の安全や労働環境に対する意識が、社会全体で大きく高まっていて、建設業界においても「安全第一」の考え方がより一層重視されるようになり、国や自治体が厳しい安全基準を次々と導入する動きが加速しています。

社会的な安全意識の高まりを受け、今回の法改正では現場作業員の安全を最優先に、一側足場の基準整備や点検義務化を進め、事故の未然防止を目指しています。

一側足場と本足場の違い

一側足場と本足場の違い

今回の法改正では、「一側足場」と「本足場」の使い分けについて、明確なルールが定められました。

特に、一側足場に関しては使用範囲が具体的に記載されたため、今後の現場運用にも大きな影響があります。

そこで、法改正の内容に入る前に、「一側足場」と「本足場」の違いについて簡単にご紹介します。

名称 支柱の数 作業床 適用範囲 安定性
一側足場 1列(片側のみ) 1列の支柱に渡す 狭い場所、軽作業 本足場より劣る
本足場 2列(両側) 2列の支柱に渡す 広い場所、重量作業 支えが多く安全性が高い

一側足場と本足場の特徴を理解したところで、次は2024年に行われた足場に関する法改正の内容を見ていきましょう。

足場法改正の主な内容

足場法改正の主な内容

ここからは、今回の法改正によって変わったポイントについて、具体的に内容を見ていきましょう。

特に、現場での安全対策にかかわる部分を中心に、重要な変更点をわかりやすく解説していきます。

一側足場の使用範囲が明確化(2024年4月1日施工)

これまでは、一側足場を設置するために明確な制限はありませんでした

そのため、コスト削減などの目的で、本足場を組めるスペースがあっても一側足場を選択するケースもありました。

しかし、一側足場は構造的に不安定になりやすく、転落事故や作業員のケガのリスクが高いことが問題となっていました。

今回の法改正では、「幅が1m以上の箇所では、原則として本足場を使用すること」との規定が設けられ、一側足場の使用は原則として認められなくなります。

これにより、施工現場での安全性が高まり、足場の選定ミスによる事故を未然に防ぐことが期待されています

足場の点検者の指名義務化(2023年10月1日施工)

以前は、足場の点検について"誰が行うのか“が明確に決まっていないケースもありました。

現場の担当者任せになっていたこともあり、点検が十分に行われなかったり、責任の所在が曖昧なまま工事が進んでしまう危険性がありました。

法改正後は、足場の点検を行う「点検者」をあらかじめ決めておく必要があります

これにより「誰が・いつ・どのように点検をするのか」をはっきりし、安全確認の徹底や、点検漏れの防止に大きく繋がります。

現場全体の安全管理体制が強化される、重要なポイントです。

点検記録の保存義務化(2023年10月1日施工)

点検を行うだけではなく、「その記録を残すこと」も義務化されました。

足場の点検を実施した内容は、記録として保存一定期間保管することが必要になります。

これにより万が一事故が発生した場合でも、点検が適切に行われていたかどうか確認が可能になります。

安全対策の信頼性を高めるうえで、非常に重要な改正といえるでしょう

法改正による施主・注文者への影響は?

法改正による施主・注文者への影響は?

足場代が高くなる可能性がある

安全基準の強化により、足場の施工にかかる手間や人件費が増えるため足場代がこれまでより高くなる可能性があります

「法改正前に行った工事では、一側足場だったのに、本足場になったら足場代が高くなった!」と思われることがあるかもしれません。

しかし、これは安全性が向上している証拠です。

そのため、必要なコストだといえます。

工期の延長

より厳格な足場設置や点検作業・施工ルールが必要になり、作業効率が若干落ちるケースが考えられます。

その結果、全体の工期がやや長くなる可能性もあり、余裕を持ったスケジュールでの依頼が必要だといえます。

事前説明や契約内容が複雑になる

法改正に伴い、業者からの事前説明や契約書の内容がこれまでより細かくなる可能性があります

施主・注文者としてしっかり説明をうけて、納得した上で契約を進めることが重要です

信頼できる業者の見分け方

信頼できる業者の見分け方

足場の工事を依頼する際には、安全性や対応力の高い信頼できる業者を選ぶことが大切です

ここでは、業者選びでチェックしておきたいポイントを3つご紹介します。

法改正の内容を把握しているか

今回の法改正についてしっかり理解できているか?が、大きなポイントです。

現場での安全管理に直結するため、きちんと把握している業者に施工を頼むのが安心でしょう。

施工実績があるか

過去の施工実績を見ることで、その業者がどのような現場で作業したか分かります。

現代においては、ホームページだけではなく、SNSに工事の様子を載せている業者も増えています。

特に、法改正後の対応事例があれば、より安心して任せられるといえます。

やねまるでは、足場を使用した工事を多数行っています。

やねまる│ホーム>施工事例

同じ足場を利用して、コストを削減する方法なども紹介していますので、ぜひご覧ください。

安すぎる見積もりには注意

極端に安い見積もりを提示する業者には、注意が必要です。

安全管理が不十分である可能性や後から追加料金が発生するケースもあります。

また、必要な手間や人件費を削っていたり、足場に関しても法を守らず施工している可能性があり、とても危険です。

適正価格を見極めた上で、工事の契約を結ぶことを強くお勧めします。

まとめ

今回は、「2024年に施工された足場に関する法改正」について紹介しました。

  • 建設業は、死亡災害の多い業種であり、中でも「転落」が約4割と最も多い事故原因
  • 一側足場の安全性が問題視され、「幅1m以上の箇所では原則として本足場を使用」と明確化された(2024年4月施行)
  • 足場の点検者を指名する義務が導入され、安全確認の徹底が図られるようになった(2023年10月施行)
  • 点検記録の保存も義務化されたため、事故時の責任の所在や確認が可能になった(2023年10月施行)
  • 法改正により足場代の増加や工期延長など、施主や注文者にも影響があるため事前説明をよく確認することが大切
  • 業者選びでは、法改正への理解や施工実績・適正価格かどうかを確認するのが安心

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2025年6月20日その他,住宅知識