アスベストが使われている屋根の見分け方|アスベストとは?健康被害は?対策方法は?
アスベストは石綿(せきめん、いしわた)とも呼ばれる天然の鉱物繊維で丈夫で変化しにくい特性を持っています。
このことから屋根をはじめとした多くの建材に使用されてきましたが、発がん性が問題となり現在では使用が禁止されています。
しかし、昭和30年(1955年)ごろから平成16年(2004年)まで屋根などに使用されたものが現在も残っています。
この記事では、アスベストが使われている屋根の見分け方を解説します。
アスベストとは?どんな健康被害がある?対策方法は?といった疑問も解説しています。
アスベストが使われている屋根の見分け方
ご自宅の屋根にアスベストが使われているかどうかの見分け方について解説していきます。
最初にアスベストが使われていないことが簡単に見分けられる方法を説明します。
2004年10月以降に建築の建物か?
2004年(平成16年)10月以降に建築の建物ならアスベストは使われていない。
労働安全衛生法施行令の改正により、2004年(平成16年)10月1日から「住宅屋根用化粧スレート」(スレート製の屋根材)の製造、販売及び輸入が禁止されています。
ですので、ご自宅が建てられたのが2004年10月以降であればアスベストは使用されていないことになります。
屋根材が粘土瓦または金属か?
粘土瓦または金属なら屋根材にアスベストは使われていない。
ご自宅が建てられたのが2004年10月より前の場合にも簡単に見分ける方法があります。
ご自宅の屋根材は、粘土瓦または金属ですか?
もし、粘土瓦または金属でしたら粘土瓦または金属の屋根材にアスベストは使用されていません。
粘土瓦の屋根材(和瓦・洋瓦)にはアスベストは使用されていない。
金属の屋根材(ガルバリウムなど)にはアスベストは使用されていない
なお、見た目が屋根瓦のような形状に作られたスレート製の屋根もありますので注意が必要です。
一般の方の目には瓦屋根に見えるデザインの屋根です。
不安な場合はご自宅の工事を行ったときの設計図書を確認するか、工事をした業者に問い合わせましょう。また、信用できる屋根工事の業者に相談するのもいいでしょう。
上記の方法で見分けられなかったら・・?
上記の方法で見分けられない場合にはさらに調査が必要になります。
屋根材の商品名や型番・品番・製造時期を調べる
建築が2004年10月より前
屋根材が粘土瓦でも金属でもない
上記の両方が当てはまる場合、屋根材の商品名や型番・品番・製造時期を調査しアスベストが使用されている屋根材の製品のデータベースと照合して確認をします。
スレート製の屋根材でアスベストが使われている可能性のある主な製品の商品名には以下のようなものがあります。
- カラーベストコロニアル…旧(株)クボタ製
- カラーベスト…旧(株)クボタ製
- フルベスト…旧(株)松下電工製
※同じ商品名でも製造年月によってはアスベストが使われていない場合があるので、製造年月の確認も必要です。また、アスベストが使われている可能性のある製品はこの他にもあります。
屋根材にアスベストが含まれているかどうかを目視で確認するのは困難です。
商品名や型番・品番・製造時期を、工事をした時の設計図書などで確認するか、工事をした工務店に問い合わせます。
リフォームで屋根の葺き替え工事を行ったことがある場合には施工した工事業者に問い合わせる方法で調査をします。
商品名や屋根材の型番・品番・製造時期が分かる場合
調査をして屋根材の商品名や型番・品番・製造時期が分かった場合、以下のデータベースの情報などを参照します。
「石綿(アスベスト)含有建材データベース」(国土交通省)
※アスベストが使われている建材の情報を見ることができるデータベースです。
上記のデータベースに情報が掲載されていれば、アスベストが使われている屋根材であることが分かります。
ご自宅の屋根材にアスベストが使われていると分かった場合の対策方法はこの記事の後半に書きましたのでご覧ください。
商品名や屋根材の型番・品番・製造時期が分からない場合
調査をしても商品名や型番・品番・製造時期が分からないこともあります。
分からなかった場合の対策方法としては、以下のいずれかの対応となります。
- アスベストの分析ができる分析機関に依頼して、屋根の一部を採取し成分の分析調査をしてもらう。
- 建物の解体、改修工事の事前調査の場合で分析調査をしない場合は、アスベストが使われている屋根材として処分する。
なお、平成元年7月以降に製造でアスベストが使用されている屋根材には識別を分かりやすくするため、アルファベットの「a」の字のaマークを表示しています。
画像引用元:環境省
ご自宅の屋根材を見てaマークの表示があることが確認できればアスベストが使われている屋根材であることが分かります。
※屋根の上は大変危険ですので、信頼できる屋根工事の業者などに依頼して確認するようにしてください。
屋根材の下にあるルーフィングも調査する
屋根材の調査とともに「ルーフィング」についても調査が必要です。
屋根材の下には通常、ルーフィングという防水シートを敷いています。
ルーフィングは屋根材の下に敷いて防水性を補完するための防水シートで「アスファルトルーフィング」とも言い、「アスファルトフェルト」というものを使っている場合もあります。
国土交通省の資料によると製造時期が1937年~1987年(昭和12~62年)のルーフィングにはアスベストが使用されているものがあります。
ルーフィングの調査は屋根の目視では困難ですので、屋根材のときと同様の方法で調査をします。
アスベストとは?
アスベスト(上記写真)は天然の鉱物繊維で丈夫で変化しにくい特性を持っています。
国内で使用された代表的なアスベストは蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)などの3種です。
アスベストの特性・使用|健康被害は?
アスベストは極めて細かい繊維となっており、熱や摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫であり変化しにくいという特性を持っているので様々な製品に使用されてきました。
建物に使う建材では、吹き付け材(下記写真2枚)、保温・断熱材のほか、スレート屋根や外壁などのスレート材や内装材などに使用されてきました。
アスベストは極めて細かい繊維のため、飛散しやすく、飛散したアスベストを人が吸入し健康被害が発生する恐れがあります。
厚生労働省の資料によると、アスベストの繊維はじん肺(肺線維症)、悪性中皮腫の原因になり、肺がんを起こす可能性もあります。
- じん肺(肺線維症)は、職業上アスベスト粉じんを10年以上吸入した労働者に起こるとされています。潜伏期間は15~20年と言われています。
- 悪性中皮腫は、肺を取り囲む胸膜等にできる悪性の腫瘍です。潜伏期間は20~50年と言われています。
- 肺がんは、吸入され肺細胞に取り込まれたアスベストの繊維の主に物理的刺激により発生するとされています。潜伏期間は15~40年です。
なお、アスベストと発病との間に相関関係は認められていますが、どのくらい以上のアスベストを吸入すると中皮腫になるかというようなことは明らかにされていません。
発じんの度合いによるレベル分け
国土交通省の資料によると、アスベストが使用されている建物の解体などの作業を発じんの度合いにより3種類の作業レベルに分類しています。
「発じん性」とは、細かなちり「粉じん」の発生しやすさです。
アスベストは衝撃を受けることで粉じんが空中に飛散しやすい性質があります。
厳重なばく露防止対策が必要
レベル1に準じて高いレベルのばく露防止対策が必要
湿式作業を原則として、発じんレベルに応じた防じんマスク、保護衣。作業衣等の使用
スレート製の屋根材はレベル3になります。
この他、レベルや作業の内容によって、作業場所の隔離、立ち入り禁止措置、作業の届出の有無などが異なります。
アスベスト処分の際の廃棄物としての扱いも、レベル1とレベル2が特別管理産業廃棄物であるのに対し、レベル3は産業廃棄物となっています。
なお、最終処分は埋立地で埋立処理です。
廃棄物には以下があります
- 産業廃棄物(産廃)…工事現場から出る通常の廃棄物がこれです。
- 特別管理産業廃棄物…産廃のうち特に指定された有害なもの
- 一般廃棄物…産廃以外のもの。家庭から出るごみはこれです。
- 特別管理一般廃棄物…一般廃棄物のうち特に指定された有害なもの
アスベスト使用の屋根の対策方法
ご自宅の屋根がアスベスト使用の屋根と分かった場合の対策について解説します。
当面は現状維持という判断も
アスベストが使用されている建物だと分かったからといって、直ちに建物の使用に制限が生じるというものではありませんし、撤去する義務のようなものもありません。
一般的には、アスベストが使用されている建材に穴を開けたり、改修・解体工事で撤去するような場合以外は、日常生活の中で特別な管理を必要としないとされています。
アスベストは、そこにあること自体が問題なのではなく、飛散すること、吸い込むことが問題となるものです。
ですので、屋根の劣化がそれほど進んでいるのではない場合、当面はそのままその屋根を使用するという選択肢もあります。
なお、ご自身の家であってもDIYで屋根に穴をあけたり切断したりしてしまうと飛散する可能性がありますので絶対にしないようにしてください。
屋根を改修する対策|改修の2つの方法
屋根を改修するという選択肢があります。
特に、スレート屋根に破損があったり劣化が進んでいる場合などは改修するのがいいでしょう。
この場合、2つの改修方法があります。
- 葺き替え工事…現在の屋根材を撤去し、新しい屋根に取り換える
- カバー工法…現在の屋根はそのままで、新しい屋根を上から乗せて完了
アスベストが使われている屋根材が現状あることに意識を置いて2つの改修方法の特徴をまとめると以下の表のようになります。
項目 | 葺き替え工事 | カバー工法 |
改修後の屋根 | アスベストの問題は解消 | 新しい屋根を乗せるが、アスベストの問題は先送りの状態 |
工期 | 撤去+新設なので比較では長め | 撤去がないので短め |
工事費用 | 撤去あり 工期長めで高い |
撤去なく、工期短めで安い しかし撤去費用を先送りした状態 |
2つの改修方法の特徴をまとめるとこのようになり、葺き替え工事ではアスベストの問題は解消します。
一方、カバー工法は、アスベストが使われている屋根材を処分せずそのまま残し、アスベストの問題は先送りしますが、安く工事ができそうです。
2つの改修方法のうち、ご自身のご都合に合う工法を選択することになります。
ただ、カバー工法での改修は後々、
- 屋根の撤去が必要になった場合
- 建物を取り壊したい場合
などのときにアスベスト対策のための費用も必要になりますので、このことをしっかりと認識して判断する必要がありそうです。
このとき、以下の2点は今後考えられることですので理解しておくといいのではと思います。
- アスベスト処分に必要な費用は年月とともに徐々に上昇していくと考えられます。
- 年月とともに既存の屋根の劣化が進行し、後々の撤去の際、必要な費用が今撤去するよりもかさむ可能性が考えられます。
まとめ
今回は、アスベストが使われている屋根の見分け方とアスベストについて解説しました。
うちの家は、アスベスト入っているのかしら?と不安な人もいるかと思います。
業者視点で話すと、アスベストの屋根は早く変えてしまったほうがいいと考えていますが、費用の問題などあるかと思います。
そのような不安含めて、ご相談受け付けておりますので、お気軽にご相談ください!
損をさせないご提案をさせていただきます。