無機塗料とは?│シリコンやフッ素塗料との違いやおすすめの選び方を詳しく解説!
家を建てる時やリフォームの際、考えなくてはならないのが外壁や屋根の塗装です。
そんな中、塗料の業界で近年注目を集めている高性能塗料のひとつが「無機塗料」です。
紫外線や雨風に強く、非常に高い耐久性を持つため、「長期間美しさを保ちたい」「塗り替え頻度を減らしたい」といったニーズにぴったりの塗料です。
一方で、価格が高めというデメリットもあるため、他の塗料との違いをしっかり理解したうえで選ぶことが大切です。
この記事では、無機塗料の特徴・メリット・従来の塗料との違いや選び方のコツを分かりやすく解説しますので、塗装を検討している人はぜひ参考にしてください。
塗料にはどんな種類がある?
「塗料なんて好きな色選ぶだけじゃないの?」 そう思う人も多いと思いますが、結論から申し上げると、【塗膜】を作る【樹脂】が何かによって、耐用年数に違いが出てきます。
【塗膜】とは、塗料が固まった際に作られる膜の事です。
外壁は雨や風、そして紫外線等から受ける刺激を塗膜によって守られています。
塗料の原料といえば、主にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂が思い出されるでしょう。
アクリル→ウレタン→シリコン→フッ素の順に、耐用年数が長く、そして価格が高くなっていきます。
しかしそんな中、今注目されているのが【無機塗料】です。
無機塗料とは?
今まで一番耐久性に優れているとされていたフッ素塗料の耐用年数は15年前後に対し、【無機塗料】はそれを上回る20年以上と言われています。
【無機塗料】とは、言葉の通り、樹脂成分に無機物が含まれている塗料のことです。
無機物が有機物と大きく異なるのは、劣化しにくいという点です。
例えるなら、ガラス(無機物)は紫外線や水に晒されても劣化しにくいですが、牛肉 (有機物)は外に置きっぱなしだと腐りますよね。
上記は極端な例えですが、無機物と有機物にはそれだけ大きな違いがあります。
つまり【無機塗料】を使用した【塗膜】は紫外線や雨風に非常に強く、耐用年数が長くなるのです。
無機塗料のメリット
無機塗料は、他の塗料と比べて価格が高いですが、その分優れた性能を持っているのが特徴です。
ここでは、無機塗料を選ぶことで得られるメリットについて紹介します。
耐用年数が長い
これに関しては前述の通りです。
従来の有機塗料より無機塗料の方が耐用年数が長くなります。
汚れが付きにくい
無機塗料は親水性が高く、汚れがつきにくいです。
親水性とは水との親和性の高さで、これが高いと水に良く馴染みます。
無機塗料はこの親水性が高く、雨が降った際に、表面のゴミを雨水が浮かび上がらせて洗い流すのです。
つまり、自浄作用が発生するため、汚れにくく、クリーニングの必要性がほとんど無くなります。
コケやカビが生えにくい
無機塗料には、コケやカビが発生しにくいという特徴もあります。
コケやカビの成長に必要な栄養源である有機物の含有量が少ないためです。
コケやカビに悩んでいる人にも、おすすめの塗料です。
無機塗料のデメリット
無機塗料には多くの優れた性能がありますが、すべてにおいて完璧な塗料というわけではありません。
メリットとデメリットの両方を把握して、自分に合った塗料選びの参考にしてください。
単価が高い
無機塗料は有機塗料と比べて単価が高いです。
しかし、耐用年数が長いことを考えると簡単にデメリットとは言い難いところではあります。
長い目で見れば、初期費用は高いですが塗装回数が少なく済み、コストパフォーマンスは高いと言っていいでしょう。
適さない塗面もある
無機塗料の塗膜は、非常に硬いため、木部の下地等には適さない事があります。
なぜかというと、木材は常に湿度を吸ったり吐いたりすることで伸縮しており、硬い塗膜は弾性が低いため対応できず、割れたり剥がれたりすることがあるのです。
しかし、最近は弾性を高める成分を配合した無機塗料もあります。
木部などに使用する際は、そのような塗料を選ぶようにしましょう。
職人の技術力が必要
塗膜が硬い、弾性が低いことは先程述べましたが、これは塗装をする職人の技術力が必要ということでもあります。
従来の有機塗料と比べ、硬く伸びにくいため、上手く塗装するためには、経験が必要となります。
無機塗料を職人さんに依頼する場合、過去の施工実績や無機塗料の塗装歴を確認した上で依頼するようにしましょう。
無機塗料を選ぶ際の注意点
ここまで無機塗料について解説してきました。
「無機塗料にしようと思うけど何に注意すれば良いのか分からない」という人のために、無機塗料を選ぶ際のおすすめポイントを解説します。
有機物の含有量
無機物だけの塗料は、非常に硬いです。
とても薄く広く塗ることを必要とする外壁塗装には、正直向いていません。
そういったこともあり、【無機塗料】にも、実用性を高めるために多少の【有機物】が含まれています。
有機物が多いと耐用年数を短くなります。
【無機塗料】を選ぶ際は、有機物の含有量と耐用年数をチェックしましょう
塗膜を作る樹脂成分として無機物が含まれているか
実は、ほとんどの塗料には無機物が含まれています。
というのも、塗料の色を決める【顔料】として、チタンや銅等の無機顔料が含まれている場合が多いため、「無機物で出来ている」=「無機塗料」とは限らないので注意が必要です。
【無機塗料】とは細かく説明すると、【塗膜】を作る【樹脂膜】に【無機結合】が含まれている塗料のことを意味します。
例えば、「弊社の塗料は、無機物が含まれていますので安心ですよ、長持ちしますよ、お得ですよ」というセールストークがあったとします。
その実態は、顔料に無機成分が含まれているだけで、【塗膜を作る樹脂は安価なシリコン樹脂であったりする場合】もあります。
特に注意したいのは、セラミック塗料です。
セラミック塗料という名前で販売されている塗料は、セラミック自体は無機物なのですが、必ずしも無機塗料とは限りません。
親水性や断熱性を高めるためにセラミックを使用していたりしますが、結合の主体となるものが、フッ素やシリコンである場合、無機結合を含まないために、無機塗料とは言えず、耐用年数も有機塗料と変わりません。
そのため、セラミック塗料には注意が必要です。
シーリング材も長持ちするものを選ぶ
※画像引用:オートンイクシード公式サイト
外壁同士の目地を埋めたり、サッシ周りに使われるシーリング材ですが、無機塗料を選ぶのであればシーリング材も長持ちするものを選ぶことをおすすめします。
せっかく無機塗料を選んで20年以上塗り替えが必要なくなったとしても、シーリング材が10年でダメになってしまえば元も子もありません。
上記写真の「オートンイクシード(オート化学工業株式会社)」は、耐用年数15年超えのシーリング材で、寿命はなんと驚きの30年と言われています。
無機塗料を選ぶのであれば、シーリング材にも注意しましょう。
無機塗料と有機塗料の費用比較
次に、長い目で考えた時に、無機塗料がどれくらいお得になるのかについて解説していきます。
※耐用年数や、塗装業者の費用によっても変化するため参考程度にお考えください。
ウレタン | シリコン | フッ素 | 無機 | |
耐用年数 | 約9年 | 約12年 | 約14年 | 約20年 |
単価 | 1,800〜/1m² | 2,500〜/1m² | 3,500〜/1m² | 4,000〜/1m² |
年間費用 | 200〜/1m² | 208〜/1m² | 250〜/1m² | 200〜/1m² |
40年間に必要な塗装回数 | 5回 | 4回 | 3回 | 2回 |
※スマホやタブレットで見ている場合は横にスクロールできます。
このように、ウレタン塗料と1㎡あたりの年間費用は、ほぼ同じなのに塗装回数は少なく、コストパフォーマンスに優れた塗料であることが分かります。
塗装の人件費等を大幅に削減出来るため、初期費用は多少高くなるものの、長い目で見るととてもお得です。
おすすめの無機塗料3選
耐久性に優れる無機塗料の中で今、注目のおすすめ商品を3つセレクトしてみました。
住宅用プレミアム無機塗料『SPネオ無機コートⅡ』(澤政興業)
SPネオ無機コートⅡは、雨や風、紫外線そして塩害に強いのが大きな特徴です。
有機塗料の中でもトップクラスの耐久性のあるフッ素樹脂塗料と比べても、非常に高い耐候性を持ち、6年間の屋外暴露試験では強い紫外線を当て続けても高い光沢性を保ちました。
この耐久性は、コスト面にも寄与します。
30年間の外壁の塗り替え回数ではウレタン塗料の半分で済み、高いコストパフォーマンスを実現します。
ニッペグランセラ™トップ(日本ペイント)
ニッペグランセラ™トップは、2024年6月に販売開始されました。
「超低汚染性」(親水性機能)によって、建物外観に付着した汚れを雨とともに洗い流し、美観を維持することができる塗料です。
また、強力防藻や防かび機能にも優れており、透湿性や弾性使用もあり、無機塗料の中で、注目度一位の塗料です。
無機ハイブリッドウォール(アステックペイント)
無機ハイブリッドウォールは、外壁用の無機水性ハイブリッド塗料です。
無機と有機成分がバランスよく配合されており、非常に耐候性が高く、外壁を長期間きれいな状態で維持します。
まとめ
無機塗料は、紫外線や雨風に強く、非常に高い耐久性を持つ塗料です。
一般的な塗料よりも価格は高めですが、長持ちするため、メンテナンス回数を減らしたい人や長期的なコストを抑えたい人におすすめです。
昨今の物価高騰の煽りをうけ、塗料も価格高騰し続けています。
今後どうなるかは分かりませんが、更に価格が高騰する前に、コストパフォーマンスに優れる無機塗料での塗装を、検討してみてはいかがでしょうか?