ガルバリウム鋼板の屋根は暑いか?|原因や対策、暑くなりにくい製品について紹介します

ガルバリウム鋼板の屋根は金属なので真夏は暑いのでは採用をためらう方もいるのではないでしょうか。

優れている点が多く国内で最も使われている屋根材ですが、断熱性能が低く暑くなる屋根であるとよく指摘されます。

この記事ではガルバリウム鋼板の屋根は暑いか?について解説します。

屋根で暑い原因や対策方法、屋根色での違い・暑くない製品があるのかといった疑問も解説しています。

ガルバリウム鋼板とは

ガルバリウム鋼板の屋根の写真

ガルバリウム鋼板とは、アルミニウムと亜鉛のめっきをした鋼板で、トタンの約3倍以上の耐久性があります。

販売開始から約40年が経っておりますが、最新の統計(2020年)を見ると全ての屋根材の中で最も多く使われているたいへん人気のある屋根材です。

ガルバリウム鋼板の特徴

ガルバリウム鋼板の特徴として、優れている点をデメリットと併せて簡単に整理すると以下のようになります。

ガルバリウム鋼板の優れている点
  • 耐久性が高い
  • 他屋根材より軽いため建物の耐震性能を向上させる

以下の表を見るとガルバリウム鋼板は他の屋根材に比べてかなり軽いのが分かると思います。

これにより建物への重量の負担を軽減でき、地震の際のゆれのエネルギーの負担が小さく済みます。

また、建物への重量の負担が少ないことから、建物の長寿命化も期待できます。

屋根材 1m²あたりの重さ
ガルバリウム鋼板 約5kg
化粧スレート 約20kg
粘土瓦 約60kg

このように優れた点がある一方、デメリットとして最も多く聞かれるのは、断熱性能が低いということです。

ガルバリウム鋼板のデメリット
  • 断熱性能が低い
  • 防音性能が低い

以下の表は他の屋根材と断熱性能を比較したものです。

断熱性能は「熱貫流率」の数値で評価します。

熱貫流率は「熱伝導率」(熱の移動のしやすさ)に材料の厚さも考慮して評価する数値で、数値が小さいほど性能が良いことになります。

ガルバリウム鋼板は化粧スレート・粘土瓦といった主な屋根材と比較して断熱性能が低いことがわかります。

屋根材 熱貫流率(W/m2K)
ガルバリウム鋼板(金属屋根材) 6.64
化粧スレート 2.22
粘土瓦 1.96
スーパーガルテクト 1.43

※アイジー工業(株)のカタログに掲載の数値から作成

なお、「スーパーガルテクト」は化粧スレートや粘土瓦よりも高い断熱性能を持つ新しいガルバリウム鋼板の屋根材です。

こういった暑くない製品についてはこの記事の最後にご紹介します。

屋根で暑い原因は?

太陽の強い日差しが街を照り付ける様子のイラスト

屋根によって室内が暑くなる原因を2つの要因に分けて考えます。

暑くなる2つの要因

まず、屋根は太陽の強い日差しを直で浴び続けるため、高温になります

50~70℃程度、さらに高温になることもあります。

そして屋根から室内に熱が伝わってくることで室内が暑くなります。

屋根によって暑くなる2つの要因
  1. 屋根材が太陽光線のエネルギーを吸収し熱くなった
  2. 熱くなった屋根材の熱が室内に伝わった

対策方法は?

青空のもと、屋根に集中したイラスト

前述の暑くなる2つの要因にそれぞれ対策します。

暑くなる2つの要因に対策する

対策は以下のようになります。

対策方法
  1. 屋根材が太陽の光線を反射し吸収しにくいようにする(遮熱
  2. 屋根材が熱くなっても熱が室内に伝わりにくいようにする(断熱

遮熱でも断熱でも100%完璧に対処することは不可能ですので、できれば遮熱と断熱の両方の対策を行います。

対策方法①|遮熱

白い屋根の住宅の写真

※白い屋根の家

遮熱は屋根の表面で太陽の光線をできるだけ反射する対策です。

遮熱の2つの考え方

以下の2つの考え方ができます。

遮熱の2つの考え方
  1. 色の選択:太陽の光線をよく反射する色の屋根材を選択する(または塗り替える)
  2. 塗料の選択:遮熱塗料が使用された屋根材を選択する(または遮熱塗料で塗り替える)

    これらの遮熱の対策は、屋根の葺き替え、カバー工事、塗り替えのいずれかで行うことができます。

    遮熱塗料とは?

    太陽の光線のエネルギーは、以下の構成となっています。

    • 約半分が赤外線(波長が780~3000nm)
    • 約半分が可視光線(波長が380~770nm)
    • 数%が紫外線(波長が約200~400nm)

    遮熱塗料とは、一般の塗料と比べ、熱に変わりやすい近赤外線波長域(780~2100nm)の反射率を高めた塗料です。

    一般の塗料では、黒色顔料に赤外線の吸収率が非常に高いカーボン(黒鉛)が使われています。

    一方で遮熱塗料は、黒色の遮熱顔料(近赤外線波長域の反射率が高い)に置き換えたものになっています。

    これにより遮熱塗料は、落ち着いた濃いめの色味でも一般の塗料に比べ近赤外日射反射率が高い塗料となっています。

    2つの反射率
    1. 全日射反射率:赤外線・可視光線・紫外線すべての反射率
    2. 近赤外日射反射率:近赤外線波長域のみの反射率

    一般の塗料が塗られた鋼板と遮熱塗料が塗られた鋼板の近赤外日射反射率を比較すると以下の表のようになり、遮熱性能が格段に違うことが分かります。

    カラー 一般的な鋼板 遮熱鋼板
    ブラック 5.4% 44.0%
    ブラウン 7.2% 40.0%
    グリーン 37.5% 44.0%

    ※波長780~2,500nmの反射率
    ※ニチハ(株)の金属製屋根材カタログに掲載の数値から作成

    色で違いは?

    遮熱塗料は熱に変わりやすい近赤外線波長域の反射率を高めた画期的な塗料といえます。

    ただ、可視光線など他の波長の光線のエネルギーも吸収されれば熱に変わります。

    遮熱性能は赤外線・可視光線・紫外線すべての光線の反射性能を含んだ「全日射反射率」の高さが目安になります。

    以下にいくつかの色について、全日射反射率と近赤外日射反射率をまとめてみました。

    全て遮熱塗料です。

    カラー 全日射反射率 近赤外日射反射率
    クールホワイト 91.0% 87.8%
    クールパールライト 75.9% 85.0%
    クールベビーブルー 70.4% 84.5%
    クールベビーリーフ 69.8% 83.4%
    クールクリーム 67.0% 85.0%
    クールシルバーアッシュ 61.0% 84.3%
    クールベネチアブルー 33.6% 65.7%
    クールディープグレー 32.9% 67.4%
    クールモスグリーン 31.8% 65.9%
    クールブラック 28.4% 61.0%

    ※数値はメーカーが公表している数値です(日本ペイントの遮熱塗料「サーモアイSi」)
    ※比較のため、淡い色と黒に近い色をピックアップしてまとめております

    表で見て分かるのですが、全日射反射率の高い色は、全般的に白や淡い色など可視光線を反射しまぶしさを感じさせやすい色が多い傾向があります。

    遮熱のベストな選択は?

    遮熱塗料と、色による全日射反射率の違いについて解説しましたが、それではベストな選択は何になるでしょう?

    結論からいいますと、みなさんそれぞれにベストな選択があります。

    以下のポイントを理解し、ご自身にとってベストな色を選択するということになると思います。

    遮熱の対策のポイント
    • 遮熱性能が高いのは「全日射反射率」の高い色。白や淡い色が多い
    • 色がご自身の好みや建物のデザインに合うか
    • 建物の立地を考慮し反射光でご近所にまぶしさを感じさせる屋根にならないか
    • 落ち着いた色味では遮熱塗料が本領を発揮する(高反射率の黒色顔料を使用のため。また、反射する赤外線は見えないのでまぶしく感じない)

    以上の内容について検討し、条件が整う範囲で選びましょう。

    白や淡い色は全日射反射率が高い傾向があり、屋根色でよく使用されるのは濃いめの落ち着いた色味です。

    これは、長く飽きのこない色であることや建物全体のデザインに合いやすいからです。

    また、白や淡い色の屋根は可視光線を強く反射するので、近隣にまぶしい光を当て続けてしまう可能性があります。

    ご自身の好みやデザインとの調和、反射光で迷惑をかけない立地であることなど条件が整えば白や淡い色の屋根を選ぶことができ、高い遮熱性能を発揮できます。

    対策方法②|断熱

    断熱材のない家が暑いイメージのイラスト

    屋根の断熱の3つの方法

    屋根の遮熱の性能を高めても、屋根は熱くなるので、屋根の熱ができるだけ室内に届かないようにする断熱の対策も重要です。

    以下の3つの方法があります。

    屋根の断熱の方法
    1. 断熱材付きのガルバリウム屋根材
    2. 屋根裏断熱:屋根裏に断熱材を設置+屋根換気
    3. 天井裏断熱:天井裏に断熱材を設置+小屋裏換気

    これらの断熱の対策は、いずれも工事による対策となります。

    断熱材付きのガルバリウム屋根材

    断熱材付きのガルバリウム屋根材とは、ガルバリウム鋼板の裏に薄い板状の断熱材を貼り付けてある屋根材です。

    屋根の葺き替え工事、カバー工事で設置が可能です。

    塗装に遮熱塗料が使用されているので、この屋根材を設置するだけで遮熱と断熱両方の対策が一度にできます

    断熱性能は粘土瓦、化粧スレートを上回ります。

    断熱材付きのガルバリウム屋根材はアスファルトルーフィング(防水シート)の外側に通常の屋根材同様に設置します。

    アスファルトルーフィングの写真

    ※アスファルトルーフィング|この上に屋根材をならべて設置していく

    アスファルトルーフィングは粘土瓦、化粧スレートを葺く際にも使う一般的な防水シートで、屋根は屋根材+アスファルトルーフィングで雨対策をするのが通常です。

    断熱材付きのガルバリウム屋根材を設置の場合はこのような防水対応のされた外側に断熱材を設置することになり、結露対策は不要です。

    具体的な製品についてはこの記事の最後で詳しくご紹介します。

    屋根裏断熱+屋根換気、天井裏断熱+小屋裏換気

    これらについてはいずれも「外装」としての屋根材そのものではなく、外装の内側の建物を構造的に支える「躯体」の内側に断熱材を設置するものです。

    屋根裏断熱は屋根裏に断熱材を設置します。

    屋根断熱で断熱材を設置する箇所を示した写真

    天井裏断熱は天井裏に断熱材を設置します。

    天井断熱で断熱材を設置する箇所を示した写真

    屋根裏断熱・天井裏断熱とも結露対策が必須で、換気口を設置する必要があります。

    断熱の対策の方法は、断熱材付きのガルバリウム屋根材を使用する方法だと遮熱+断熱の対策が一気にできて、屋根もスッキリしてとても優れていると思いますが、実際の検討にあたっては建物の構造やご予算など条件を総合的に考えて判断することになります。

    暑くない製品がある?|遮熱+断熱

    ガルバリウム鋼板の屋根材に遮熱+断熱の対策がされた製品を2つご紹介します。

    超高耐久 横暖(よこだん)ルーフ|ニチハ(株)

    横暖(よこだん)ルーフ
    ガルバリウム鋼板の表層に遮熱塗料が塗装された遮熱鋼板を使用しているほか、裏面には断熱材として硬質ウレタンフォームが一体になっており、瓦や化粧スレート以上の断熱性能を持ちます。

    遮熱性能について、ニチハ(株)が行なったハロゲンランプを60分間照射した試験で、一般的な鋼板と比較し裏面の温度が約12℃低かったということです。

    断熱性能についても、ニチハ(株)のシミュレーションで一般的な金属屋根(断熱材無し)と比較して、屋根材の裏側の温度比較で約25℃低くなっており、化粧スレートとの比較でも約21℃低くなっていたということです。

    フッ素塗装とポリエステル塗装の選択ができたりグラデーションのある意匠のものなど、多くのラインナップがあります。

    価格は、スタンダードモデルの「超高耐久 横暖ルーフS」で1㎡あたり約7,700円(※)となっています。

    ニチハ(株)公式サイト

    ※価格について:必要な各種部材や取り付け工事費などが含まれていない標準的な本体価格です。実際の価格は信頼できる屋根工事業者から見積りをもらい確認してください。

    スーパーガルテクト|アイジー工業(株)

    スーパーガルテクト
    通常のガルバリウム鋼板に2%のマグネシウムを添加しめっき層を強化したことでガルバリウム鋼板に⽐べ3倍超の寿命が期待できるという「超高耐久ガルバ」を採用した屋根材です。

    耐久性が強化された新しいガルバリウム鋼板です。

    また、めっきの厚さも一般的なガルバリウム鋼板の1.25倍でさらに耐久性を高めています。

    表層に遮熱塗料が塗装され遮熱性能を持っているほか、断熱材としてポリイソシアヌレートフォームという素材を採用し、瓦や化粧スレート以上の断熱性能を持ちます。

    遮熱性能についてアイジー工業(株)が行なったランプを60分間照射した試験で、通常の塗装の鋼板に比べ裏面の温度が約15℃低かったということです。

    断熱性能についても熱貫流率の数値で瓦や化粧スレート以上の断熱性能を示しています。

    屋根材 熱貫流率(W/m2K)
    スーパーガルテクト 1.43
    粘土瓦 1.96
    化粧スレート 2.22
    ガルバリウム鋼板(断熱材無し) 6.64

    ※アイジー工業(株)のカタログに掲載の数値から作成

    落ち着いた色の6色があり、価格は、1㎡あたり8,190円(※)となっています。

    フッ素塗装の「スーパーガルテクト フッ素」(全2色)もあります。

    アイジー工業(株)公式サイト

    なお、積雪がおおむね30センチ以上になる地域(北海道全域と本州の日本海側・山岳地域)は施工不可地域とされていますのでご注意ください。

    ※価格について:必要な各種部材や取り付け工事費などが含まれていない標準的な本体価格です。実際の価格は信頼できる屋根工事業者から見積りをもらい確認してください。

    2023年8月4日住宅知識,屋根ガルバリウム,屋根,暑い