ガルバリウム鋼板屋根のメンテナンス|塗装のタイミングは?手につくこの白いの何?

ガルバリウム鋼板の屋根材はトタンの3~6倍という高い耐食性を持ちます(さびに強い)。

瓦やスレートなどより軽量であることから建物に高い耐震性能と長寿命をもたらします。

劣化したスレートやトタンの屋根にカバー工事(重ね葺き)で設置も可能です。

このような優れた特徴から、近年ではすべての屋根材の中で最も多く使われています。

この記事ではガルバリウム鋼板の屋根のメンテナンスについて解説します。

メンテナンススケジュールは?どのように劣化していく?塗装のタイミングは?触ると手に着く白いものは何?自分でできる日常点検の内容は?といった疑問も解説しています。

メンテナンススケジュールは?|ガルバリウム鋼板の屋根

システム手帳のイラスト

ガルバリウム鋼板の屋根のメンテナンススケジュールを解説します。

立地と環境

海岸地域の街の写真。函館市大森海岸

建物のある環境などによりメンテナンスが必要な頻度が異なります。

立地により環境は大きく異なります

海岸地域>工業地域>市街地>田園地帯
(メンテナンスの必要な頻度の比較)

※特に海岸に近い地域は塩害によりさびやすい厳しい環境です。最新の高品質な製品でも品質保証の対象を「海岸から500m以遠」の地域に限定しているほどです。

このようなこともありますので、この記事のメンテナンススケジュールはあくまで目安としてご覧ください。

メンテナンススケジュール

メンテナンススケジュールを表にまとめました。

メンテナンススケジュール

経過年数 5
10
15
20
25
30
日常点検 1年に1回程度
定期点検
塗り替え
シーリング    
葺き替え

※日常点検は1年に1回程度、ご自身で目視で確認できる範囲で実施します(この記事の最後に詳細を書きましたのでご覧ください)
※定期点検は5~10年に1度、信頼できる屋根業者に依頼
※塗替は15~20年、25~30年を目安に屋根の状態で判断
※葺き替えの検討は30年以降が目安。カバー工事も可能

適切なタイミングで補修や塗り替えをすることで屋根と建物を長持ちさせることができます。

そのため日ごろの点検が大切です。

どのように劣化していく?塗装のタイミングは?

ガルバリウム鋼板の断面構造を理解し劣化がどのように進むかを知っておくと、適切なタイミングで塗装の塗り替えをすることができます。

ガルバリウム鋼板の断面構造

ガルバリウム鋼板の断面構造を説明する図※めっき層は重量比でアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%の合金
※塗装は下塗り、(中塗り)、上塗りの2~3層からなる。なお製品により異なる

ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛とシリコンの合金を溶融させたものに鋼板を浸し、鋼板の表面に薄い合金の膜を付着させた薄い板です。

合金の膜がめっきと呼ばれ、鋼板がさびるのを防ぐために付着させます。

そしてこの上から塗装をします。

塗装は樹脂と顔料などでできており、外観の向上とガルバリウム鋼板(鋼板+めっき)を外部の環境から保護する役割があります。

工場から出荷し屋根材として設置した後は、塗装の塗り替えはできますがめっきを付け直すことはできません

劣化は外部環境にさらされる表層の塗装の部分から進んでいきます。

したがって、ガルバリウム鋼板の屋根を長持ちさせるためには劣化した塗装の塗り替えのタイミングが特に重要です。

長持ちのために特に重要なメンテナンス
  1. 塗装の劣化を見逃さないようする
  2. 塗装の劣化が見られたら塗り替え

※塗装を維持しめっき層と鋼板の劣化をできるだけ遅らせる

このあとガルバリウム鋼板の屋根が劣化していく過程とともに塗装のタイミングについて詳しく解説します。

どのように劣化していくか|塗り替えのタイミングも

新しいガルバリウム鋼板の屋根の写真※葺き替えたばかりの新しいガルバリウム鋼板の屋根|色調が良く美しい光沢がある

劣化の過程をまとめると以下のようになります。

ガルバリウム鋼板の屋根の劣化の過程
  1. 光沢が減ってくる(塗膜の劣化)
  2. 塗装の色調が変化(塗膜の劣化)
  3. 塗装の白亜化(塗替のタイミング)
  4. 塗膜のふくれ(めっきの劣化)
  5. 白さび発生(めっきのさび)
  6. 赤さび発生(鋼板のさび)

1~3が塗膜の劣化、4~5がめっき部分、6は鋼板の本体がさびてしまった状況です。

3の白亜化はチョークのような白い粉が発生することから「チョーキング現象」とも呼ばれます。

白亜化のあとにめっき部分の腐食が始まり劣化していきますので、白亜化が見られたときが塗り替えのタイミングになります。

触ると手につく白いものは何?

金属の外壁に触れて手に白い粉がついたチョーキングの写真※触れたら手のひらに白い粉がついた

触ると手に白いものがつく状態が白亜化です。

塗膜は樹脂と顔料などでできており、劣化が進み塗膜表面の樹脂がなくなると顔料が表面に粉状に現れて触れると手につきます。

これが手につく白いものの正体です。

屋根の光沢がなくなり、色褪せて、白亜化したら、塗り替えのタイミングです。

このあとめっきの劣化が進む前に、信頼できる屋根工事業者に相談し塗り替えを検討しましょう。

特に重要
屋根の光沢がなくなり、色褪せて、白亜化したら、塗り替えのタイミング
金属屋根を塗装している写真※屋根塗り替えの様子

放置すると?

さびてボロボロになったトタン屋根の写真※本体の鋼板が赤くさびてボロボロになったトタン屋根。めっきの内側の鋼板本体がさびると強度が失われ写真のように崩れ始める。

塗膜の劣化を放置しても、次はめっきが鋼板をさびから守ります。

めっき自身が徐々にさびることで(白さび)鋼板を保護する仕組みです。

めっきの層の合金がすべてさびきってしまうと、ついに鋼板がさびはじめます(赤さび)。

鋼板はさびてしまうと強度を失い、ぼろぼろになり、屋根として使うことができなくなります。

ガルバリウム鋼板ほ厚さが0.35ミリ程度と薄く、さび始めてしまうと穴あきがすぐに起こります。

こうなると、塗り替えでまだまだ長持ちしていたはずの屋根は使い物にならない状態になってしまいます。

新しい屋根材で葺き替えるか、またはカバー工事をすることになります。

雨水が侵入している可能性もあり、屋根材を支えている建物の躯体の野地板(のじいた)の腐食も心配されます。

建物の維持管理費の節約にも、資源を大切にする意味でも、適正なタイミングで塗り替えをするのが賢明といえます。

シーリングの劣化

外壁の劣化シアタシーリングの写真※縦の継ぎ目に充填されたシーリングが劣化しひび割れている(写真は外壁のもの)

シーリングは「コーキング」とも呼ばれ、屋根材と壁などの部材の接合部分のすき間をしなやかに埋めて雨が入らないようにしています。

温度差や雨、紫外線などの影響を受けつつ経年劣化で縮まって硬くなり、すき間ができたりひび割れたりというように劣化してきます。

放置すると雨水が侵入するようになってしまいます。

シーリングは屋根材本体や塗装より早く10年前後で劣化します。

比較的こまめな点検・補修となります。

補修は信頼できる屋根工事業者に依頼します。

劣化したシーリングをきれいに取り除き新しいシーリング剤を充てんすることになります。

自分でできる日常点検の内容は?

チェック表を見て日常点検をするエプロン姿の女性のイラスト

年に1回程度実施の日常点検はご自身で、安全な場所から目視で確認できる範囲で行います。

地震や台風の後など建物や屋根に影響しそうなことがあった場合には、そのつど行います。

もし日常点検で屋根に気になる変化や不具合などが見つかった場合は、信頼できる屋根工事業者に相談してください。

ご自身で行う日常点検
  • 安全な場所から年1回程度目視で点検。地震や台風後も。
  • 気になる変化、不具合があれば信頼できる屋根工事業者に相談する。

※屋根に登ったりはしごを使用する高所作業は大変危険ですので行わないでください。

以下のポイントを押さえて屋根をよく見るようにすると効果的です。

点検のポイント
  1. 屋根表面の色褪せ、さびはないか
  2. 損傷(きずやへこみ)はないか
  3. 屋根材、部材がずれたり外れたりしていないか
  4. シーリングが切れたりひび割れたりはがれたりしていないか

    点検のポイントで、1は塗り替えの時期の検討や、さびが進んでいれば葺き替え工事またはカバー工事の検討となります。

    2の場合は屋根材の一部取り換えや、軽い傷の場合はタッチアップ(傷の部分だけの小さな塗り増し)が考えられます。

    3は雨漏りに直結する重大な異常の可能性がありますので早めの補修が必要です。

    4も放置すると雨漏りが起きますのでできれば早めに補修を依頼します。

    1~4の異常を発見した場合、信頼できる屋根工事業者に相談し必要に応じて点検を依頼してください。

    ご自身で行う日常点検は、異常のありそうな箇所を早期に発見することが目的ですので、その後の対応は信頼できる屋根工事業者の力を借りましょう。