ラジカル塗料とは?|ラジカルとは?他の塗料との比較は?主要3社の商品の仕様は?
屋根や外壁に塗装をするのは屋根や外壁の外観を美しく仕上げるとともに屋根と外壁を保護するのが目的です。
塗装して仕上げられた「塗膜」は長年屋外で周囲の環境に直接さらされることになります。
紫外線をはじめ温度、水分、かび・藻、ホコリなどのさまざまな影響を受け劣化が進むため対候性が非常に重要になります。
今回は「ラジカル塗料」について解説します。
「ラジカル」とは?他の塗料との比較は?主要3社の商品の仕様は?といった疑問も解説しています。
ラジカル塗料とは?
「ラジカル塗料」とは顔料として配合している酸化チタンのラジカルを制御した塗料です。
「ラジカル」というものを配合した塗料という意味ではなく、逆に、ラジカルを制御した形で酸化チタンが配合された塗料が「ラジカル塗料」です。
ラジカルとは?
塗料に含まれる顔料のうち、白色の顔料「酸化チタン」は紫外線をはじめ酸素、温度などの外部環境の影響によって、光触媒作用(※)の化学反応によりラジカル(劣化因子)と呼ばれるものを発生させます。
ラジカルは有機物を酸化分解する(他の成分と反応する)性質を持つため、塗膜の結合材として使用されている樹脂の結合が破壊され、これが塗膜劣化の原因となります。
酸化チタンは白色の顔料として優れておりなくてはならない成分ですので、酸化チタンが発生させるラジカルを制御し塗膜への悪影響を最小限に抑えることが、塗膜の耐久性を向上させるために重要です。
※光触媒作用とは、この記事では酸化チタンが特定の波長の太陽光を吸収しそのエネルギーで酸化還元反応の化学反応を進みやすくしてしまう性質のことです。
しかし私たちは建物への塗装が仕上がった後ではできるだけ長い年月完成時に近い状態を維持したいです。
つまり、できるだけ塗装の耐久年数を長くするためには塗膜の中で化学反応が進んで欲しくないのです。
★チョーキング現象とは?
写真にある「チョーキング現象」は、紫外線などの影響で発生したラジカルにより塗膜が劣化してきているサインになります。
水を吸った外壁が水分を乾燥させることができなくなり、放置するとかびや藻の発生やクラック(細かなひび割れ)の原因になることもあります。
チョーキング現象は、外壁を手で触ると手に粉が付くので簡単に分かります。
チョーキング現象が見られたら塗装塗替えを検討する時期に来ているサインと覚えておきましょう。
ラジカル塗料とは?
ラジカル塗料は顔料として配合している酸化チタンのラジカルを制御した塗料です。
塗料に配合されている微細な酸化チタンの粒子にラジカルを発生させる原因となる紫外線が到達するのを阻止する技術が使われています。
また、発生したラジカルを捉え無害化する粒子を配合する技術などもあります。
ラジカル塗料はこのような技術で、ラジカルを制御する機能を持った塗料です。
ラジカル塗料はこういった技術で、白色顔料の酸化チタンが発生させるラジカルを制御し塗膜への悪影響を最小限に抑え、塗装の耐久年数の長期化を実現した塗料です。
他の塗料との比較は?|ラジカル塗料
屋根や外壁に使われるアクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、およびフッ素樹脂塗料とラジカル塗料を比較してみましょう。
まず、比較するそれぞれの塗料の特徴を以下に簡単に確認します。
アクリル樹脂塗料
アクリル樹脂塗料は、比較的安価に施工でき一般的に使用される塗料です。
色のバリエーションが豊富にあり、重ね塗りもしやすいところが利点です。
比較的安価ですが紫外線に弱く劣化が早いため、耐用年数は短いです。
塗膜が固く、温度による建材の伸び縮みに対応できないため、ひび割れも起きやすい塗料です。
ウレタン樹脂塗料
ウレタン樹脂塗料は質感がやわらかく、さまざまな素材によく密着します。
柔らかいため、建材の伸び縮みがあっても対応できるという特徴もあり、防汚性、水気にも強く、傷や摩耗に対しても強い耐性を持っています。
湿潤状態に弱く、湿度・温度の変化に弱いこと、紫外線、微生物に弱いため、耐用年数は短いです。
シリコン樹脂塗料
シリコン樹脂塗料は塗膜の結合の強さと酸化しにくさにより耐熱性に優れ、耐候性・耐水性・撥水性・耐薬品性・電気絶縁性にも優れている、耐用年数が長い非常に優れた塗料です。
耐薬品性は弱く、強酸、強アルカリによって劣化します。
今回紹介している5種類の中でちょうど中間のグレードでシリコンを基準として比較されることが多いです。
フッ素樹脂塗料
フッ素樹脂塗料は他と比べて耐候性に優れた塗料で、長期間塗替えが不要です。
フッ素樹脂は化学的に安定しており、紫外線などの外部要因による劣化に対して非常に強いです。
塗膜の摩擦係数が低いため、滑りやすいというデメリットもあります。
塗膜が硬いため、素材がモルタルなどの動きがある外壁に塗装するのにはあまり向いていません。
価格は他の塗料に比較して高いです。
ラジカル塗料と他の塗料との比較
アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、およびラジカル塗料を価格と平均的な塗り替え年数(耐用年数)で比較すると以下のようになります。
価格 | 耐用年数 | |
アクリル樹脂塗料 | 安い | 約6年 |
ウレタン樹脂塗料 | 安い | 約8年 |
シリコン樹脂塗料 | 標準的 | 約10年 |
ラジカル塗料 | 標準的 | 約15年 |
フッ素樹脂塗料 | 高い | 約15年 |
※価格は「材工共」(「ざいこうとも」と読み「材料費+工事費」の意味)の価格の表示が通常で、価格は地域や施工規模により異なります。
この記事では各塗料の相対的な価格の比較をしています。
※平均的な塗替え年数(耐用年数)は、塗装される表面の状態や環境条件によって異なる場合があります。
※ラジカル塗料は現在販売されているシリコン樹脂系のラジカル塗料(関西ペイント アレスダイナミックTOP)で比較しています。
ラジカル塗料は塗膜への悪影響を最小限に抑えたラジカル制御の技術によって耐用年数が長いものとなっており、塗替え年数の間隔を長くできます。
なお、それぞれの塗料には異なる利点と適用範囲がありますので、用途や環境条件に応じて最適な選択をすることで最良の仕上がりとコストパフォーマンスを実現することができます。
塗料の選定にあたっては、ご自身の予算のご都合や現地の条件などを総合的に加味し、信用できるリフォーム業者と事前にしっかり相談して判断すると良いでしょう。
★塗装に「柔らかさ」が必要?「素材に伸縮があっても対応できる」ってどういうこと?
屋根や外壁などに使われる素材には金属やコンクリート、木材などがあります。
塗装はこれらに塗料を密着させて塗膜を形成し、長年の間、美観と素材の保護を担います。
一方、素材は年月とともに水分が失われて収縮したり、温度によって伸縮を繰り返しますので、素材の伸縮に応じて塗膜も伸縮をしないと塗膜の剥がれやひび割れの発生につながります。
このため塗装には一定の柔らかさが求められます。
主要3社の商品の仕様は?|ラジカル塗料
塗料メーカー主要3社で発売になっているラジカル塗料には以下のものがあります。
ラジカル塗料には他の商品もありますが、今回はこれらの3商品の仕様をみてみます。
これらの商品の仕様を以下にまとめました。
基本的な項目をまとめるとこの表のようになり大きな違いがありませんが、塗料をご使用の際には各塗料の取り扱い店にお問い合わせのうえ、ご使用の現場での入手の容易さや価格、詳細の仕様などの検討をされると良いと思います。
日本ペイント
パーフェクトトップ |
関西ペイント
アレスダイナミックTOP |
エスケー化研
プレミアムシリコン |
|
樹脂 | シリコン樹脂系 | ||
1液/2液 | 1液 | ||
素材 | モルタル・コンクリート・ALC・サイディングボード・押出成形セメント板・スレート・鉄・アルミ・PC板 | ||
施工方法 | 吹付/ローラー/刷毛 | 吹付/ローラー/刷毛 | ローラー/刷毛 |
希釈剤 | 水道水 | ||
工程 | 上塗り | ||
期待耐用年数 | 15年 |
※スマホやタブレットで見ている場合は横にスクロールできます。
※各塗料をお使いの際には事前にメーカー発表の仕様を都度ご確認ください。
※1缶当たりの塗り面積は日本ペイント パーフェクトトップの資料では15kg缶で88~136㎡となっています。
塗装の重要性
この記事の最後に塗装の重要性について解説します。
塗装というと屋根や外壁の美観のためだけに施工するものと言う印象をお持ちの方が多いようです。
しかし、塗装は素材を外部の環境による劣化から守り、建物の寿命を延ばすという重要な役割があります。
塗装の劣化の影響は素材ごとに以下のようなものがあります。
- 金属の素材は塗装の劣化により「サビ」が急速に発生するようになる。
- 木材は塗装の劣化により「腐朽」が急速に進むようになる。
- 鉄筋コンクリートは塗装の劣化により「ひび割れの拡大」が早まる。(塗装のない「打ちっぱなし」を見かけますが塗装で保護する方がよいことは明らかですね)
これらの劣化が長い年月放置されるとどのような事態を引き起こすかというと、以下のことが考えられます。
- 金属は錆びると非常に脆くなり、触るだけで崩れるほどになる。強度はほぼゼロで強度は全く期待できないものになる。
- 木材は腐朽により非常に脆くなり、触るだけで崩れるほどになる。強度はほぼゼロで強度は全く期待できないものになる。
- 鉄筋コンクリートはひび割れの拡大が進み中の鉄筋まで水が入り鉄筋の腐朽が進むと引張強度が極端に小さくなり、建物崩壊の危険性が非常に高くなる。
建物の素材の劣化が進むと修理費用が高額になるだけでなく、建物が危険な状態になることもあります。
これらの素材の深刻な劣化を外部の環境に対して最前線で守っているのが塗装というわけです。
ですので、塗装の塗替え時期を迎えるごとにご自宅の塗装塗替えをすることは、ご自宅のメンテナンスのコストを総合的に下げることにつながり、最もコスパのいい対応の一つといえると思います。
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