トタンとガルバリウム鋼板の違いや見分け方は?最新の金属屋根材も紹介します!
トタンとガルバリウム鋼板はいずれも金属屋根材として多くの建物に使われています。
特にガルバリウム鋼板は国内での販売から約40年が経ち、現在では金属屋根の出荷トン数全体の94%(※)を占める圧倒的なシェアとなっています。
この記事ではトタンとガルバリウム鋼板について解説します。
両者の違いは?見分け方は?ブリキは?最新の金属屋根材は?といった疑問も解説しています。
※(一社)日本金属屋根協会の統計による2020年の出荷トン数
トタンとガルバリウム鋼板の違いと見分け方
トタンとガルバリウム鋼板の違いと見分け方について解説します。
トタンとガルバリウム鋼板の違い
トタンとガルバリウム鋼板の違いは鋼板そのものではなく、鋼板の表面に施すメッキの種類の違いです。
- トタンは鋼板に亜鉛のめっきを施したもの
- ガルバリウム鋼板は鋼板にアルミニウム・亜鉛合金のめっきを施したもの
トタンとガルバリウム鋼板の見分け方
トタンとガルバリウム鋼板の見分け方にはいくつかの方法があります。
ガルバリウム鋼板はトタンの約3~6倍の耐久性があるサビにくい鋼板です。
この点を活かして、屋根の傷などに発生しているサビの状況を見て推測する方法です。
また、全体的な見た目でガルバリウム鋼板はグレーやシルバーの光沢を持ちこの特徴から見分ける方法もあります。
さらに、トタンが安定供給できるようになったのが1953年(昭和28年)であるのに対し、ガルバリウム鋼板の販売が開始となったのが1982年(昭和57年)ですので、1982年より前に設置した屋根であればトタンの可能性が高い、と考えることもできます。
実際に見分けるのは一般の方には少々難しいかもしれませんので、信頼できる屋根工事業者に点検を依頼する時などに聞いてみるといいと思います。
その際、屋根そのものを見てもらうことに加え、直近の工事の時の見積や図面があれば見てもらうとより確実と思います。
- 傷などに発生しているサビの状況で推測する(ガルバリウムはサビにくい)
- ガルバリウムの表面はグレーやシルバーの光沢がある
- 1982年より前に設置の屋根ならトタンの可能性が高い
- 屋根設置の時の見積や図面があれば確認する
※少々難しいので、信頼できる屋根工事業者に聞いてみることをおすすめします。
トタンとは?
「トタン」という呼び方は鋼板に亜鉛めっきを施したもののうち主に建築資材として使われているものの俗称で、通常、「亜鉛めっき鋼板」と呼ばれます。
鋼板よりもサビやすい亜鉛が先にサビて溶け出して被膜を作ることで鋼板をサビから保護します。(亜鉛の犠牲防食作用)
しかし環境や年数により亜鉛が溶け出し続け失われていくと鋼板のサビが進んでいくことになります。
安価で耐食性に優れていることから主に屋根に使用され、ほかに外壁や雨どいなどにも使われています。
国内では、1906年(明治39年)に官営八幡製鐵所(現 日本製鉄)で製造されたのが最初で、のち、1953年(昭和28年)に同製鉄所で「連続式亜鉛めっきライン」という製造方式が稼働を開始し、安定供給がされるようになりました。
トタンの語源は?
「トタン」の語源としては、ポルトガル語で亜鉛のことを「ツタンナガ(tutanaga)」と呼んだことから日本で「トタン」と呼ばれるようになったという説があります。
なお、ブラジルポルトガル語(ブラジルのポルトガル語)では亜鉛は「ズィンコ(zinco)」と呼ぶようです。
ガルバリウム鋼板とは?
ガルバリウム鋼板はアルミニウム・亜鉛合金のめっきを施した鋼板です。略して「ガルバ」と呼んだりもします。
めっきの組成としてはアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%(質量比)からなり、JIS規格のJIS G 3321「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板」で規定されています。
アメリカのベスレヘムスチール社(当時)が1972年に開発したもので、国内では1982年(昭和57年)に現在の日鉄鋼板(日本製鉄グループ)が製造販売を開始したのが最初です。
トタンの約3~6倍の耐久性があるとされ、屋根や外壁を含む建築分野はもちろん、農業施設、産業施設、産業機器、電気機器、輸送機器等非常に幅広い分野で使用されています。
ガルバリウム鋼板も環境や経過年数によって最終的にはサビていきますが、アルミニウムが含まれていることによりサビた亜鉛が緩やかに時間をかけて溶け出し皮膜をつくる(亜鉛の犠牲防食作用)ことに加え、サビたアルミニウムとサビた亜鉛両方によって鋼板を保護する作用により、トタンと比較して非常にサビに強いものとなっています。
(一社)日本金属屋根協会の統計によると、2020年の金属屋根の出荷トン数全体の94%がガルバリウム鋼板となっており、圧倒的なシェアとなっています。
素材名 | 2020年 | シェア |
---|---|---|
亜鉛鉄板 | 6,190t | 1% |
カラー亜鉛鉄板 | 13,129t | 3% |
塗装5%アルミめっき鋼板 | 2,662t | 0% |
55%アルミめっき鋼板 | 101,567t | 94% |
塗装55%アルミめっき鋼板 | 276,903t | |
カラーアルミ | 238t | 0% |
塩ビ鋼板 | – | – |
塗装ステンレス | – | – |
銅板 | 1,135t | 0% |
合計 | 401,824t | 100% |
※(一社)日本金属屋根協会の統計数値から作成。金属屋根の出荷動向。シェアは整数%以下切捨てのため合計が100%にならない。
さらに同協会では各種屋根材の出荷動向がまとめられており、平方メートル換算で金属屋根材が60%以上のシェアを占め、屋根材全体としても、いかにガルバリウム鋼板が使われている屋根材であるかが分かります。
素材名 | 2020年 | シェア |
---|---|---|
金属屋根材 | 50,228千㎡ | 60% |
厚型スレート | 1,321千㎡ | 1% |
波型スレート | 1,032千㎡ | 1% |
粘土瓦 | 16,948千㎡ | 20% |
化粧スレート | 13,222千㎡ | 15% |
合計 | 82,751千㎡ | 100% |
※(一社)日本金属屋根協会の統計数値から作成。各種屋根材の出荷動向。金属屋根は8kg/m2の換算値で算出されている。シェアは整数%以下切捨てのため合計が100%にならない。
ガルバリウム鋼板の語源は?
「ガルバリウム鋼板(Galvalume)」という名称の語源は、亜鉛めっきの「galvanize」とアルミニウムの「aluminum」を合成して作られた造語で、「ガルバリウム鋼板」は開発した米国の会社の商標として登録されています。
建物の耐震性向上、カバー工事の施工が可能
ガルバリウム鋼板は他の屋根材と比較して軽量です。
屋根材 | 1m²あたりの重さ |
ガルバリウム鋼板 | 約5kg |
化粧スレート | 約20kg |
粘土瓦 | 約60kg |
このため、粘土瓦の屋根など重量のある屋根からの葺き替えで屋根を軽くし、建物の耐震性を向上させることができます。
また、軽量であることから、既存の屋根材を撤去せずに新たにガルバリウム鋼板の屋根材を乗せてリフォームする「カバー工事」の施工が可能となっています。
- 建物の耐震性向上が可能
- カバー工事の施工が可能
さらにガルバリウム鋼板の屋根の特徴、耐用年数、メンテナンス、メリット・デメリットなどをこちらの記事に書いていますのでぜひお読みください。
ガルバリウム鋼板設置・使用上の注意点
耐久性があり軽い等の特徴を持ち、広く使われているガルバリウム鋼板も完全無欠なものではなく、設置や使用のしかたを間違えるとむしろトタンよりも早く腐食するケースがあります。
重要な注意点を列記します。
- 水溜りを作らない(屋根の緩勾配)
- コンクリートとの接触を避ける
- 防腐・防蟻処理した木材との接触を避ける
- 雨掛りしにくい部分は定期的に水洗いする(外壁)
- 異種金属との接触を避ける
- もらいサビに注意
1~3では、ガルバリウム鋼板は耐食性が確保できず、場合によってはトタンよりも耐食性が劣ってしまうこともあります。
4は、外壁に使用の場合ですが、雨に直接濡れにくい軒下部分などで塩分や酸性分などが洗い流されず濃縮しやすくなります。
このためサビやすく、黒く変色する場合があります。
このような箇所は定期的に水洗い等(屋内に漏水させないように注意して)をするのをおすすめします。
※赤色の部分をホースなどを使って水洗いする。
5は、別の種類の金属どうしが接触していると、どちらかサビやすい金属のサビが早く進行してしまう現象です。(電食現象)
6は、ガルバリウム鋼板の屋根の上にネジや針金など金属が放置されていると、サビたねじなどからサビが屋根にうつってしまう現象です。
屋根の上にネジや金属の部材などを放置することなく片づけるようにすれば対応できます。
めっきとは?
この記事では「めっき」という言葉が大切で多数出てきますが、そもそもめっきとはどういう意味でしょう。
めっきとは「鍍金(ときん)」ともいい、サビにくくしたり表面を美しく見せたりすることなど様々な目的で物体の表面に金属の薄膜を密着させることです。
めっきの方法は複数ありますが、トタンやガルバリウム鋼板は溶かした金属の中に鋼板を漬け込みめっきする「溶融めっき」という方法でめっきするのが一般的です。
亜鉛の場合は「溶融亜鉛めっき」と呼び、亜鉛めっきをするときの一般的な方法です。
溶融めっきは、溶かした金属の中に漬け込む様子から通称「どぶ漬け」と呼んだりもします。
鉄と鋼?鋼板とは?
鉄と鋼(はがね)は違うのでしょうか?鋼とは何でしょうか?
「鉄」と「鋼」は正確には別物で、鉄に炭素のほかマンガンやリン硫酸などを微量に含んでいるのが鋼です。
鉄と鋼は以下のように炭素の量で区別します。
- 鉄は炭素量が0.02%未満
- 鋼は鉄に0.02~2.14%の炭素を混ぜた合金
鉄はそのままの状態では脆く酸化しやすいうえに加工が困難なため一般に出回っていることはなく、私たちが普段目にするのは人工的に鉄に炭素などを加えた鋼です。
鋼は炭素の量が多いほど硬くなりますが粘り強さがなくなり、曲げの強い力が加わると折れてしまいやすくなります。
鋼板は「こうはん」と読み、板状にした鋼のことです。
金属屋根材は製作時に曲げ加工をするので材料の鋼板に粘り強さも必要で、加工に耐えるしなやかさを持った炭素量の鋼板が使用されます。
最新の金属屋根材は?
最新の金属屋根材について解説します。
屋根材と技術仕様で、いずれもガルバリウム鋼板の技術を基礎にしたものとなっています。
「SGL(エスジーエル)」|日鉄鋼板(株)
※SGLを採用しているケイミュー社のスマートメタル
2013年に「次世代ガルバリウム鋼板」として日鉄鋼板が「SGL」を商品化しています。
ガルバリウム鋼板にマグネシウムを2%添加することで、ガルバリウム鋼板の3倍超の耐食性を有するものになっています。
「SGL」の名称は、「S」がSuperior(上質な)、Special(特別な)、Super(超越した)など、優れた特性を示す言葉の頭文字に多くでてくることから、ガルバリウム鋼板を意味する「GL」と合わせて「優れたガルバリウム鋼板」を想起させる「SGL」と定めたものです。
さらにSGLと各種の塗装を組み合わせて商品展開しています。
「ガルフレックス」|JEF鋼板(株)
ガルバリウム鋼板は国内の通常の使用環境下ではすでに十分なレベルの耐食性があるという認識で、JEF鋼板(株)ではガルバリウム鋼板そのものの耐食性向上ではなく、曲げ加工に関連する独自の技術を開発しています。
ガルバリウム鋼板は厳しい曲げ加工を受けるとめっきに深い亀裂が生じることが課題であることから、めっき皮膜の構造の制御によって軟質化させる技術を独自に開発し「ガルフレックス」仕様という名称で呼んでいます。
ガルフレックス仕様により加工性が高まり、曲げ加工をした部分も平坦部に近い耐食性を発揮させることができるというものです。