スレート屋根材「パミール」の問題|見分け方は?対応方法は?アスベスト問題は?
今回は2008年を最後に販売終了になったスレート屋根材「パミール」について解説します。
パミールの2つの問題について知りたい方はもちろん、ご自宅のスレート屋根の劣化にお悩みの場合にも参考になる内容です。
見分け方は?対応方法は?アスベスト(石綿)による健康被害の問題はないの?といった疑問も解説しています。
パミールとは
パミールはアスベスト(石綿)を使用していない「無石綿高級屋根材」として1996年~2008年にニチハ株式会社から販売されたスレート屋根材です。
【参考】ニチハ株式会社の1996.12.06ニュースリリース「無石綿高級屋根材 新生『パミール』発売」
昭和30年(1955年)ごろからアスベストがその耐久性の高さから多くの屋根・外壁用などのスレート材に使われてきましたが、その後発がん性があることが分かりアスベストを含む製品は2004年に全面的に製造・販売が禁止になります。
このようななか、アスベスト使用のスレート材に替わる建築資材として登場したのが「無石綿」のパミールというわけです。
しかし無石綿スレート材の開発が急がれたためか、屋根業界では有名な2つの問題が起こります。
パミールの問題①|劣化の早さ
パミールの問題とされている1つ目は、パミールを使った屋根が7~10年ほどでボロボロに劣化してしまう建物が多発したことでした。
一般的な耐用年数との比較
一般的にスレート屋根の耐用年数は20~30年ともいわれます。
10年以内にボロボロになってしまうのはとても早く、「不良品ではないか」というクレームが多数出ました。
メーカー側は製造者の責任として認めていないようです。
劣化の具体的な状況
パミールは劣化が始まるとまず先端付近が変色します。
その後パミール本体がまるでミルフィーユのように層状に薄くめくれあがってビラビラにはがれていきます。
層状にはがれたパミールは屋根材としての機能を果たせなくなり水が浸入し雨漏りが発生します。
また、はがれた部分が風で飛ばされ周囲に散乱します。
パミールの問題②|さびやすい釘
パミールの劣化の早さの問題のほか、パミールを固定する釘がさびやすいという問題が発生しています。
原因
この件に関してニチハは釘のメッキの厚さが薄くさびやすい釘が使われていたことを認めています。
平成22年(2010年)11月5日付の文書で、安全処置が必要なものについて無償での処置を進めるという内容の「お詫びとお知らせ」の発表しています。
【参考】ニチハ株式会社「ラスパート釘(屋根材「パミール」付属品)に関するお詫びとお知らせ」(PDF)
釘がさびるとどうなるか
さびた釘は強度が極端に失われ、釘で固定していたパミールのズレ・落下などが発生します。
パミールのズレ・落下が発生することは、屋根にすき間ができたり屋根材がない部分ができることになりますので、雨漏りの原因になります。
また、パミールの落下により物的・人的被害につながる可能性があります。
パミールの見分け方
パミールは状態が良ければ見分けるのは簡単です。
ご自宅の屋根がパミールかどうかを見分けることは、屋根の劣化に対応するための工事の内容を検討するのに役立つと思います。
パミールの見分け方
パミールの見分け方は屋根材を設置した年、形と表面の筋のデザインで分かります。
まず、パミールは1996年~2008年に販売されているので、屋根材を設置した年(工事をした年)を確認し、設置した年がこの中になければパミールではありません。(発注のタイミグでしだいで2009年設置の場合もあるかもしれません)
設置した年が1996年~2008年(2009年)内の場合、屋根材を安全に見られる場所から目視で確認します。
上の写真は劣化が進んでいてやや不明瞭ですが、1枚のパミールに3か所の凸部と2か所の凹部が互い違いのデザインで付いています。
- 設置した年が1996年~2008年(2009年)
- 3か所の凸部と2か所の凹部、全ての長さが同じ
- 表面に線状のスジが入っている
※これはパミールでスタンダードな「パミールA木肌調」の見分け方です。パミールにはこのほか「パミールS」と「アミールM」があります。
外見で見分ける方法はこのようになります。
ただ、写真よりも劣化がさらに進んでいる場合パミールの凹凸がさらに不明瞭になります。
この場合、屋根はがすことでハッキリと見分ける方法があります。
屋根をはがすと屋根材の1枚1枚に「ニチハ パミール」と大きく書かれているので分かります。
これはパミールどうしが重なりあって隠れるところに書かれているので屋根をはがさないと見ることができません。
※屋根の上は大変危険ですので、信頼できる屋根工事の業者などに依頼して確認するようにしてください。
パミールの延命工事はできないか
屋根材を長持ちさせるためには塗装工事をすることが考えられます。
しかし劣化したパミールはミルフィーユ状にはがれて劣化し、手で触るとはがれてしまうような状態になります。
この状態では屋根を長持ちさせるための王道である塗装をすることができません。
劣化したパミールの対応は次のようになります。
劣化したパミールの対応方法
劣化したパミールへの対応方法を解説します。
屋根劣化の対応には一般的にカバー工事と葺き替え工事があります。
カバー工事は今ある屋根はそのままにして、さらに上から屋根を設置する工事、葺き替え工事は今の屋根材を撤去し新しい屋根材を設置するものです。
パミールは結露する
パミールは結露しやすいといわれています。
劣化し水分を含みやすくなった状態のパミールと屋根の室内側の温度差によりパミールの裏面(室内側)が結露するのです。
このため長期間放置すると結露したわずかな水が集まって流れ、天井に落ちて雨漏りの原因になることがあります。
※なお、建物の構造や気候などの条件で必ずしも結露するというものではありません。
葺き替え工事がおすすめ
カバー工事はいまあるパミールの屋根を温存し、その上にさらに屋根をかけるものです。
カバー工事は工期が短い、安くできる可能性があるなどの特徴がありますが、結露し雨漏りになる可能性のことを考えるとおすすめではありません。
劣化したパミールの屋根の対応方法としては、葺き替え工事で新しい屋根に替えてしまうことをおすすめいたします。
屋根材が分からない場合
パミールの見分け方、対応方法を解説してきましたが、劣化が激しく屋根材が分からないかもしれません。
信用できる屋根工事業者に見てもらう
屋根材が分からない場合も、信用のできる屋根工事業者に依頼し見てもらうことで分かります。
最終的には屋根をはがすと「ニチハ パミール」の大きな文字が確認できますので、このときはパミールと分かります。
アスベスト使用の屋根材では?健康被害は?
スレート屋根の中には発がん性のあるアスベストを使用した屋根材も過去に設置されています。
2004年9月以前の工事で設置したスレート屋根の場合はアスベスト使用の屋根の可能性もあります。
屋根材にアスベストが使用されているかわからない場合も、屋根材に穴をあけたり切断したりしなければ日常生活の中で特別な管理は必要としないとされています。
撤去しなければならない義務のようなものもありませんが、アスベストを使用した屋根を見分ける方法や健康被害などについて以下の記事に詳しく書きましたのでご覧ください。
【参考記事】アスベストが使われている屋根の見分け方|アスベストとは?健康被害は?対策方法は?
なお、パミールは「無石綿」の屋根材として1996年~2008年に販売されたもので、アスベスト(石綿)の含まれていない屋根材です。
屋根の品質保証について
最後に屋根の品質保証について少し解説します。
住宅の品質確保の促進等に関する法律
平成12年(2000年)4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が施行されました。
この法律により、新築工事の場合屋根の10年間の品質保証が義務付けられました。
リフォーム工事については品質保証の義務付けはありませんが、施工業者が独自に品質保証をしている場合もあります。
パミールは1996年~2008年(2009年)内に設置になりますので、10年以上前の設置であり、現時点では品質保証外になりそうです。
屋根材の品質保証の現状(一例)
現在販売中のスレート屋根材の品質保証の例を参考に、最近の品質保証について簡単に確認してみましょう。
メーカーによる工事の元請け業者に対しての品質保証です。
【例】ケイミュー株式会社のコロニアル
品質保証の期間
・室内への雨水の侵入:製品の施工完了日より10年間
・色調の著しい変化:製品の施工完了日より2年間
保証の条件(以下の全てを満たすこと)
・保証書が発行された新築物件
・(以下略)
※リフォーム物件は、様々な変化や劣化の可能性があり、当社製品の設計基準・施工基準を満たしているかどうかの判断が非常に難しいため、製品本体保証の保証対象は新築物件に限定しています。
一般的にスレート屋根の耐用年数が20~30年ともいわれますが、メーカーの品質保証は新築物件のみが対象で10年間、リフォーム工事で設置の場合は品質保証の対象外というが現状です。